「 リュウ さん、大丈夫かな... 」 僕は 「えっ」 と言った。
今朝の TV での 彼の夫人の 葬儀中継が 脳裏をかすめた。
「 ------ オレの方が早く死ぬと 家内に約束していたのに ------- と、
リュウ さんが TVで 無念そうに言っていました 」
「 男はみんなそう思っている。------- オレの方が早く死にたい------ 」
僕は 黙ってそ の言葉の意味を 考えた。 彼 は言った。
「『 東京物語 』 、 あれは 東山千栄子さんが 先に死ぬんだよな...。
-------- あれは死にましたか、 あれは死にましたか------- って リュウさん。
確か そういう 台詞が あったな... 」
小津安二郎 の 『東京物語』 の一節を 彼は声にした。
目を 瞑ると、笠 智衆 さんが そこに居て、
俳優、笠さんの 亡くなった 奥さん 花観(ハナミ)さんの相貌が浮かんだ。
「 戦前の 小津 さんの映画に 『 父ありき 』 という作品がある。
笠さんが 父親の役で 佐野周二さんが 息子だった。
三〇歳 で 五〇歳以上 の 父の役を やった。 ただ 親子しか出てこない 映画だった。
小津 さんという人は 日本映画のある種の 髄のような人だね 」
そして彼は ゆっくり続けた。
「 オレ、10年ぐらい前だけど...... オレ、生意気だったんだよな。
ライバルはどなたですか? 聞かれたことがあったんだ。
『 笠 智衆 です 』 と答えた。
その後、あんなことしたことないのに、 オレは 笠 さんの家を 訪ねて行った。
『 こんにちは 』。 ------- 誰? ------- 娘さんらしい声。
『 あの~ 笠 さんにお目にかかりたいんですけれど 』。
------- おじいちゃん、誰か来たわよ。 あなた、だーれ --------。
『 あのー 緒形 拳です』。 -------- えっ、 緒形さん。 おじいちゃん 緒形 拳さんよ-------。
すると 奥から 笠 さんが出てきて------- あの、なんでしょうか? -------- と言われた。
オレは-------、『 ここになにか書いてください 』。 まあ、 お上がりなさい--------。
『 笠 さん、書いて下さい 』。 笠 さんはすぐに書いてくれた。
それで ------- ハンコ は? -------- と 聞かれた。
オレは、 『 はい、できれば 押してください 』。
-------- あの 銀行印 でも いいですか? -------- と 笠 さんは言われた。
その字はなんのてらいもない、いい字だった」
「 その時、笠 さんはなんて書かれました?」
彼 は きっぱりと答えた。
「 『山川草木』 」
(1991 Switch Vol.9 No.3 P127 より )
![ryu-chishuu1[1].jpg](http://www.kadoma-megane.com/blog2/ryu-chishuu1%5B1%5D.jpg)
1991年に 7月に発行された 雑誌 『Switch スイッチ』 の中で、
緒形 拳さんが 笠 智衆 さんの 事を 語られている 印象深い記事(エピソード)です。
これを 読んで... 本気で 緒形拳さんの家まで行き 書 を 書いてもらおうと 考えた...
( 無謀な 考えの20代でした... 19年前の ) 私 がいました。
本日(10月5日)は、緒形 拳 さんの 命日 です。 ( もう 2年が経ちますか... )
魚心 あれば 水心
( 日めくり カ レンダーより )
213 6965 8607

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